青少年交流事業
招聘

「日中植林・植樹国際連帯事業」 2023年牧雲社日中芸術交流青年代表団

本事業は、各種芸術分野に才能・関心を持つ中国の大学生・青年を訪日招聘し、植樹活動、環境・防災に関する視察等を通じ、参加者の環境・防災意識の啓発を図るほか、「芸術を通じたSDGsの実現」をテーマに、公衆に対する芸術教育、芸術を通じた環境保護啓発活動・震災復興等に取り組む民間団体との交流を行い、同分野における日中両国青少年間の相互理解と友好を促進することを目的として実施しました。

芸術はSDGsに貢献しうるか?―YESとNO、2つの見解から活動開始

活動初日に訪問した黄金町エリアマネジメントセンターと東京藝術大学とでは、芸術とSDGsの関係について、表面的には相反する見解が聞かれました。しかしながら「なぜ、そうなのか」、それぞれの背景や根拠を理解することで、方程式とは異なる芸術ならではの解を探る醍醐味を知るきっかけとなりました。

じかに触れ、感じることから始まる視察も

テーマに関する視察は、同じ芸術でも、美術館のような施設に収まりきらない取り組みを理解するものでした。直島を自由に視察してから瀬戸内国際芸術祭実行委員会の概要説明を受けたように、芸術鑑賞同様、まず自ら実物に触れ、感じ、それから説明を受けて理解を深めるものも含まれました。また、町歩きなどの屋外見学で手づくりの防災システム等の事例に触れたほか、東京藝術大学のセミナーでは、大画面のビジュアルで“作品”とその制作過程を疑似体験することができました。

人と人との絆を結ぶ、芸術の力に気づかされる

プログラムを通じ、多くの団員は芸術が人と人との絆を結ぶ役割を担っていることに強く共鳴し、テーマを追求する確かな道標を得たことがうかがえました。また、どの訪問先でも、団員との対話やふれあいが尊重され、その心づかいも大きな示唆を与えてくれたようです。

招聘期間2023年7月23日(日)~7月29日(土) 6泊7日間
招聘人数29名(団長代行1名、引率1名、団員27名)
実施団体(公財)日中友好会館
派遣団体北京牧雲文化芸術基金会(牧雲社)
派遣協力在中国日本国大使館
内  容・訪日テーマ「芸術を通じたSDGsの実現」に関する講義、交流、視察
・環境・防災施設の視察
・植樹活動
・日本に対する包括的理解促進につながるプログラム等
7月23日(日)PM来日
7月24日(月)AMNPO法人 黄金町エリアマネジメントセンター 訪問・交流
PMサントリー美術館 参観
東京藝術大学 訪問・交流
歓迎会
7月25日(火)AM香川へ移動
PM大束川浄化センター 視察
7月26日(水)AM直島へ移動
PM直島視察・参観
7月27日(木)AM瀬戸内国際芸術祭実行委員会 訪問・交流
PM地方視察・参観
7月28日(金)AM東京へ移動
PM一寺言問を防災のまちにする会(一言会) 訪問・交流(植樹活動を含む)
7月29日(土)AM帰国

◆今後の仕事や生活面で学ぶべき点:サステナビリティというテーマや、ここ数日の現地視察、特に瀬戸内国際芸術祭の視察・交流は、私に新たな創作的インスピレーションを与えてくれました。将来的には「脱構築」「再構築」「持続可能性」をキーワードに、新たな「持続可能性」の概念を身体表現を用いた作品にしていきたいと考えています。

◆今回の活動で最も印象的だったのは、東京藝術大学の訪問・交流です。橋本和幸先生が3つのプロジェクトについてお話しくださいました。中でも最も印象に残っているのは、「子どもと森の融合」です。長年行われてきたプロジェクトで、地元の材料を使って家を建て、多くの子どもやその親が関わり、その過程で自然の魅力を感じるだけでなく、自分の小さな家を建てる喜びを味わうことができました。私は音楽が自然と一体化できるかどうか、またその大いなる可能性を探求することについても考えさせられました。

◆日本の防災・環境に対する理解の深さと、各機関による政策の積極的な実施、特に住民・現地の委員会・行政機関の協力に深く感銘を受けました。人間と自然の調和のとれた関係があり、これこそが地球で長く共存できる持続可能な精神です。今後もこの精神を実践し、持続可能で環境にやさしいライフスタイルで周囲の人々に影響を与え、中国の人々にこれらの方法を伝えていきたいと考えています。
雨水のリサイクル利用については、地域全体で非常にうまく利用されており、このように雨水を使用することで、水を大幅に節約できます。同時に隣近所同士の和気あいあいとした助け合いの関係をうらやましく思いました。また、日本では、幼い頃から環境意識や環境保護の教育を始めることを重視しており、これは子どもの人生に大きな影響を与えるとても大切なことだと思います。

◆ここ数日の環境保護や防災に関する講義や植樹活動を通じ、自然環境が私たち人類にとって重要であることを深く意識しました。人類が科学技術化社会へ歩みを進めてから、私たちはずっと自然環境を傷つけるやり方で便利さや快適さや手っ取り早い生活を求めてきました。しかし、このままでいけば、はじめは誰も傷つけないように見えた爆弾が、長い年月を経てついに全人類の眉間に命中します。だから環境保護・防災の問題は私たちにとって一刻の猶予も許さない問題です。
芸術デザインを学ぶ一人の学生として、私はずっと、自分の専攻について、ありきたりな視覚表現しか理解しておらず、目を引く視覚効果やさまざまな奇をてらった視覚記号を追求し、いわゆる環境保護・防災は、自分の専門とは何の関係もないと思っていたのです。しかし、今回の訪問を通じ、私は日本の一見整然とした建築やデザインの多くが、日本のデザイナーのセンスによるものではなく、空間利用や防災上の利便性、環境保護、節約等多くの要素を総合的に考慮し、人へのやさしさを詰め込んだデザインだったと知りました。本当に収穫がたくさんあり、私のデザインに対する理解もより深まりました。

◆私は中国絵画専攻の学生で、例えば、筆の使い方や色の配色など、専攻内のことしか勉強していませんでした。芸術が自分や周りの人に何をもたらすかについては考えてもいませんでした。 しかし、今回の活動で、黄金町エリアで芸術が高架下の狭い空間を変容させ、かつて衰退していた直島が芸術によって活性化するのを見て、芸術にできることがたくさんあること、アートは利己的なものでなく、芸術は環境のサステナビリティに独自の力を提供できることを思いがけず実感しました。この経験は、今後の私の芸術活動に少なからず影響を与えるでしょう。
日本に来る前、私は中国の舟山市にある交通の便が悪い小さな島を訪れたばかりです。近年、経済発展に努力している場所です。この島もアートを使って経済を動かしたいと考えているようで、そこの人々も“芸術的な雰囲気”の作品をいくつか作り上げています。しかし、これらの作品は、ネット上のインフルエンサーが“映える”写真を撮る場所を複製したように感じられ、自身の特色を生かして海を再生させたのではありません。伝統文化への愛と尊敬は、ありふれた決まり文句だと思います。私たちはそれを何年も言い続けていますが、本当の実践は伴っていません。この点において、日本はすばらしい仕事をしたと思います。

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