日中国交正常化50周年を祝して
井上 正幸
日中友好会館 評議員
公益財団法人日本国際教育支援協会 理事長
1972年の国交正常化の後、79年に私は当時文部省の国際教育文化課に勤めていた。各国との教育交流を推進する部局だ。その時に、中国からの留学生受入れが大きな課題として浮上した。日本の大学は入学に際して高校卒業まで12年間の学習年限を要件としていたが、当時の中国は9年であり不足していた。このため中国外交部・教育部そして日本側では外務省と文部省が協議をして、不足分を補うために、中国長春市に中国・赴日留学生予備学校が設置され、日本から教員が送られた。日本語は国際交流基金が担当し、各教科の先生は文部省が日本の県教育委員会に依頼をして派遣されることになった。
「水を飲むときには誰が井戸を掘ったか忘れてはいけない」という言葉がある。
最初に長春に赴いた先生方、システムを作り上げた当時の日中の教育行政関係者の労苦を忘れてはいけないと考える。以来、中国から日本への留学生はコロナ禍の前の2019年には国費、私費を含めて12万4千人と大きく拡大している(日本学生支援機構統計)。
国交回復以来日本と中国の間には様々な懸案がある。しかしながらお互いの国の国情、社会、言語、文化等を理解しているこれら留学生の存在は、課題が深刻にならないうちに、様々なチャネルを通じて解決に向けての努力をするための大きな存在であると考える。教育や人材育成は時間がかかるが、必ずそれに見合う成果があるものだと思う。日本にとって中国との貿易量は今や各国と比べ最大になっている。今後日中両国はお互いに学びあい、パンデミックや脱二酸化炭素対応など人類共通の課題解決に向けて協力して立ち向かう必要があると考える。