親たちも学んだ日中青少年交流
石川 好
日中友好会館「日中青少年交流事業」諮問委員会 委員
酒田市美術館館長、作家
写真:日中青少年交流事業 諮問委員会において2017年 筆者(中央)
本年は日中が国交正常化して50年の節目の年を迎える。私は過ぐる20年近く、多くの交流事業に参加してきた。たくさんの思い出と出会いがあったが、その中で強く記憶に残るエピソードを紹介したい。それは青少年交流事業である。改めて説明するまでもないが、本事業は日中両国の青少年が相互訪問し、ホームステイをしながら交流を深化させるもの。私は中国の高校生たちが来日した際、秋田県を訪問することとなり、アドバイザーとして参加した。
中国どころか、初めて外国人を自宅に寝泊まりさせるということで、秋田県のホストファミリーは緊張していた。生活習慣は違うし、言葉も通じない。中国側の高校生たちは、国の方針もあり特別優秀な生徒らしく、英語をかなり話すことが出来た。一方の日本の高校生たちは、ほとんど英語が話せないし、その上恥ずかしいのかモジモジするばかり。ホストファミリーはハラハラしながら過剰なくらいホスト役に努め、中国の高校生たちは、積極的に両親にも話しかけてくるのであった。これは秋田県に限らず、その時受け入れてくれた全ての自治体が経験したことであろう。
日中の高校生たちによるホームステイ交流なのだが、ショックを受けたのは、実は日本のホストファミリーであった。私はホストファミリーをしてくれた親たちから、極めて意外な言葉を聞いた。
「ホストファミリーを受けて良かったです。実は当初中国人はマナーが悪いと聞いていて心配だった。ところがその風評とは真逆で、うちの子供たち以上に礼儀正しく、食後の食器洗いや掃除まで積極的にする。我が家の子供は、ただ眺めるだけ。中国の高校生たちのマナーに教えられることが多かった。中国人に対する見方が大きく変わりました。私たちはそのお礼がしたいくらいです。」
このファミリーはその後、滞在した高校生との手紙やメールでの交流が続いていたという。