横浜プリンスホテルシアターレストラン「李芳」雑技公演物語

 横浜プリンスホテルは1987年より全面改装のため休業し、1990年5月17日当時横浜市内最大の441室の客室を誇るホテルとして盛大にオープンしました。海抜64m磯子丘の上の立地を生かした曲線を描くユニークな建物で、ゆとりある客室全室から港町横浜の美しい夜景が楽しめました。
 「横浜・磯子の丘の上、憩いとくつろぎのシティ&リゾートホテル」をコンセプトに、日本初の本格的なシアターレストラン「李芳」が常設されました。席数は188席、本場広東料理を味わい、日本での上演機会が少ない、中国の伝統芸能「雑技」の公演を通して、中国文化の豊かさを発信することが目的です。

 1989年9月、横浜市と友好交流都市提携を結んでいる上海市で内外のお客様の評判が高い、上海雑技団公演への招聘が決まりました。招聘にあたり、プリンスホテルには中国との交渉窓口がないため、東京プリンスホテル企画部長の私がNHK特番「世界のサーカス上海雑技団」を制作された石川猛氏(NHK前上海支局長)に協力を要請し、さらにNHKプロモーションより、大八木亨氏(紅白歌合戦、元プロデューサー)が加わりました。
 1990年5月、開業祝賀レセプション特別公演に合わせて、中国文化部対外文化連絡局から視察官が来日。彼らの帰国後まもなく、公演出演契約の承認が下り、NHKプロモーションと上海市対外文化交流公司との間での出演契約も交わされ、シアターレストラン「李芳」は予定通り開幕することができました。
 上海雑技団の人気は高く、本場のショーが身近で見られるハラハラドキドキの妙技の数々、その中でも柔軟技、バランス芸、足芸、自転車芸はスリル満点でお客様の人気演目になりました。公演を続ける中で、中国文化部から中国各地の特色ある雑技団の推薦を受け、民族色豊かな雑技演目、舞踊、楽器演奏がプログラムに入り、お客様からご好評を頂きました。

上海雑技団公演チラシ

 1994年11月3日(文化の日)には、5年間に渡る雑技公演が中国と日本の文化交流、友好促進に寄与したとして、中国文化部劉徳有副部長より感謝状が授与され、北京での表彰式の模様が当日のNHKニュースで全国放送されました。
 雑技人気が高まり、日本各地で雑技公演が開催されるのを見届け、1996年9月30日、第40期大連雑技団の公演を最後に「李芳」公演の幕が下りました。公演期間6年5カ月、公演1期平均60日間40期、公演回数2747回、動員数25万人、中国を代表する雑技団12団(上海、北京、天津、武漢、大連、長春、山東省、江西省、河南省、雲南省、内蒙古、新疆ウイグル自治区)に出演して頂きました。

在りし日の横浜プリンスホテル

 そして、2006年6月30日横浜プリンスホテルは営業を終了しました。新装開業から僅か16年の営業でしたが、憩いとくつろぎ、文化発信、本物にこだわり、従来のホテルには見られない充実した施設、質の高いサービスで国際都市・横浜を代表するホテルと評価を頂いている中での営業終了でした。

 1999年3月にプリンスホテルを退職した私は、中国文化部・雑技団との橋渡し役になることを決断、6月に日中文化制作センターを設立しました。雑技公演の企画・招聘・制作、手配・運営、広報、演目解説に取り組み、2000年 浦和ロイヤルパインズホテル「山東省雑技団」公演 招聘・制作、2001年 北九州博覧祭、福島・うつくしま未来博「武漢雑技団」公演 招聘・制作、2002年 日中国交正常化30周年記念事業参加、日中合作、中国初・世界初。オールスター雑技競演・エンターテインメント「ゴールデンライオン」の企画、制作、2007年 中日国交正常化35周年記念「中日文化・スポーツ交流年」閉幕式公演協力、2016年 日中友好会館主催「第26回中国文化の日」中国呉橋少女雑技団公演・雑技紹介などの実績が挙げられます。
 雑技公演の素晴らしさは、子供から大人まで笑顔で心から楽しめることです。雑技は3000年以上の歴史が有り、漢時代には100以上の演目が有ったことから「百戯」といわれ、漢の武帝が外国の使節を招待して、全国から集めた雑技名人の雑技公演見せたという史実が残されています。日本では、1995年前後から人気が出始め、現在では遊園地、テーマパーク、リゾートホテル、劇場公演も多く、雑技人気が定着してきたように思います。
 シアターレストラン「李芳」雑技公演が日本に雑技を紹介した功績は大きく、公演を通して日中友好、親善、文化交流に果たした役割は高く評価されて良いと考えます。私が中国の老朋友に恵まれ、現在充実した日々を過ごせるのはシアターレストラン「李芳」雑技公演を担当したおかげと感謝しています。
 第2次安倍政権発足以降、日本国民の中で急速に反中国感情が芽生え出し心配しています。今年は日中国交正常化50周年を祝って、記念事業が多く開催されています。この機会を捉え、日中友好、親善の気運が高まることを切に願っています。

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