アナログ伝承
陳 隆進
日中友好会館 評議員
一般社団法人東京華僑総会 会長
中日国交正常化50周年を記念して、日本全国各地で様々な行事が行われております。ご招待を受け、多種多彩な記念行事に参加してまいりましたが、半世紀の歴史を振り返るに当たり、「初心忘るべからず」(中国語:初衷不可忘)、「水を飲むとき、井戸を掘った人を忘れてはならぬ」(中国語:喝水不忘掘井人)という言葉が頻繁に用いられます。
半世紀と言う時代の流れは、環境も大きく変わり、今の時代は、井戸の存在を知らない、または見た事が無い世代が主流の社会でもあります。今どきは水を飲むとき、水道を作った人、若しくは、コンビニ店を作った人を思い出すのかもしれない、と友人と笑い話をした事が有ります。重要なのは作った人達である事は言うまでもありません。
私が会長を務める東京華僑総会では、11月下旬に中日国交正常化50周年記念として、都内でこの半世紀の華僑の歴史を振り返る写真パネル展を開催しました。本企画の目的は、絶えることがない中日友好の精神と両国間の懸け橋となり、中日国交正常化の礎を築いた先輩華僑達の姿を深く記憶に留め、その友好精神、助け合い精神、苦楽を共にして来た魂を次の世代に継承して行くことです。まさに「百聞は一見に如かず」、約300点の写真を展示しました。
現在のデジタル化時代においては、この写真が撮影された時代のように直接顔を合わせなくてもオンラインで交流を行える時代となりました。写真パネル展もアナログなプロジェクトと言えるかも知れません。
中日国交正常化50周年記念パネル展示会「不朽の功績、永遠の友好の使者―民間資料と共に振り返る半世紀」開幕式(中国文化センター)
しかし、昔も今も、人と人が交流を通じ、五感である「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「触覚」、「味覚」の何れかを持って、心と心を通い合わせる。それはどの様な時代になっても変わることはないのです。
新しい時代の環境の下、中国と日本は未来に向かい友好の共有認識を深め、平和な関係を構築していかなければなりません。私は微力ながら、これからも中日友好に貢献していく決意です。
2022年12月1日